「AI」という言葉がここ最近いろいろなところで取り沙汰されていると思っていたら、すでに現実世界に形となってかなり浸透しているようだ。
「Artificial Intelligence = AI」という言葉をはじめて知ったのは、四半世紀前、大学生の時に買ったWarp RecordsのコンピレーションCDのタイトルからだった。今では死語と化した「インテリジェント・テクノ」というリスニング向けのテクノミュージックがあると知って買い求めた。それまでもKraftwerkやYMOなどのクラシック・テクノはお気に入りだったが、現代的な四つ打ちテクノが自分の好みかどうかについてはかなり懐疑的だった。
冒頭の "The Dice Man" によるトラックを聴いた瞬間、新しい世界が広がったような気がした。「人工知能」というタイトルから連想していた「無機質さ」や「冷たさ」とは対極にある「温かさ」をその音から感じ取った。
この曲をきっかけにRichard Jamesという存在を知り、Aphex Twin、Polygon Window、AFX等の別名義音源を買い漁ることになった。結果として、このコンピレーションとの出会いによって、テクノワールドにどっぷり浸かっていくことになってしまった。Autechre、Richie Hawtin、Alex Patersonといったキーとなるアーティストが多数参加していたのも功を奏したのかもしれない。
久しぶりにMONOでこのCDを聴いてみた。
最初の印象のままに「人肌テクノ」で嬉しくなる。
こういう音楽に接すると、ものづくりにおいて、テクノロジーが新しいか、古いかはあまり重要な要素ではないと思ってしまう。肝となるのは、結局「作り手のこころ」。そこに同調するかどうか。
現在の「AI」技術の背景には、もちろん「人」がいる。多数の人が関わって作っているからか、その「こころ」がかなり感じ取りにくくなって来ている気がする。もうすでに「AI」が新しい「AI」を作り始めているのなら、正直もうゴメンという気持ちになってしまう。
(青柳)