先日名古屋ON READINGで開催された『読書のための音楽室』というイベントのために、スピーカーMONOを持ち込んだ。参加者全員で音楽を聴きながら同じ文庫本を読む、本や音楽がどんなものかはイベントが始まるまで何かわからない、という興味深い試み。
音楽を選曲された雨と休日の寺田さんは、外から聞こえる環境音や室内の雰囲気に気を配りながら、音量を微妙に変化させながら、音楽を再生していた。
最初は鳴っているのが分からないくらいの微かな音。台風による雨や風の音のほうが大きいくらい。交通量の多い道に面しているので車の音もつねに聞こえる。一定の間隔で静寂が訪れ、音楽が耳に入る。しばらくして、信号が赤になったときにそうなることに気が付いた。
イベント後半になると、音楽が耳に入りやすくなっていた。このシチュエーションに慣れたのだろうか。あるいは音量がやや上がっているのかもしれない。
みんなで同じ物語を読み、同じ音楽を聴いている状況がとても面白かった。会話はないが、ある種のコミュニケーションをとりあっているような感じもした。まわりの現実の音、静かで美しい音楽、そして物語がまじりあい、空間にふわふわと漂っていた。
イベントが終了して、寺田さんが、今日は皆さんにとって初対面の音楽だと思うので、緊張を和らげるため、最初はとても小さな音楽で再生したことを話された。普段よく聴く音楽なら信頼関係が出来上がっているので、読書の際でももう少し大きな音量で聴いても大丈夫だと思う、という言葉にハッとした。
「音楽との信頼関係」
それがあるからリラックスして、心から音楽を楽しむことができる。
永遠のパートナーのような音楽との出会いは、僕の人生を豊かにしてくれるんだな、と再確認した。
(青柳)