おせちと日本酒にくわえてお正月の楽しみになっているのは、もちをたくさん食べられること。こんがり焼いてのりと醤油で食べるのが好きだが、お雑煮でお吸い物に入ってしっとりした感じもまた良い。主張しない奥ゆかしい味もよいが、もちならではの触感が最高だと思う。ねばりがあってコシがある絶妙なかたさ。他にありそうでないような気がする。
音楽を聴いていて気持ちいい音だなと感じるとき、中低域にコシのような感覚がある場合が多い。そのコシ具合はいろいろなパターンがあるのだが、まだ分類できる程には研究が進んでいない。でも、ひとつだけ前から分類に入れたいと思っているのが、「もち型」。もちの触感に似た独特のグルーブ感を持つサウンドだ。
代表例は、まりん(砂原良徳)の『LOVE BEAT』。まりんの全ての作品がそういうわけではなく、『LOVE BEAT』以降が「もち型」に入る。「もち型」の音がすごいのは、どんな再生環境でもよい音で聴こえること。カーステレオでも安いイヤフォンでもそれなりに気持ちいい。
このお正月に実家近くのレコード店でまりんの『WORKS '95-'05』が中古で見つかったので買ってみた。DISK 1はファーストから『LOVE BEAT』までのアルバムから選曲された11曲、DISK 2はリミックスワークを集めた15曲というたっぷりとした内容。曲順が年代順になっているので、いつ「もち型」のサウンドになったのかを分析できてとても面白かった。
分かったのは、突然「もち型」になったのではないということ。徐々にサウンドにおける「もちつき」が始められ、LOVE BEAT期に完全に「おもち」として完成した印象を持った。
まりんサウンドの「もち成分」、そして「もちつき」作業がどんなものであるのか知りたいが、そう簡単に分かるものではないんだろうな。「餅は餅屋」ということだし、まりんにまかせておくのが一番なのかもしれない。
(青柳)