Thursday, 27 September 2018

モスキートーンの秋

今年の夏は経験したことないくらい暑かったからだろうか、蚊がとても少なかった。人間もうなだれるくらいだから、蚊にとっても暑い空気の中を活発に飛び回る気にはならなかったのだろう。それとも暑さで弱った人間の血は美味しくないのかもしれない。

9月に入り少し涼しくなると、蚊がここぞとばかりに活動を始めた。夏の間おとなしかった分、とても精力的に飛び交っている。種を残すために、多少寒くても必死になって頑張っていること自体は尊敬に値するが、刺される身としてはやはり辛い…

作業をしていると耳元でプーンと音がするが、いろいろと物の多い工房で蚊を目視するのはとても難しく、仕留められることはほとんどない。両手を離せない重要な作業をしているときに限って、素晴らしいタイミングで手の甲を刺してくる。血を吸っている姿を横目で見つつ作業を続けなければならない時の切なさ…。人間が想像もできないような嗅覚を持っているのだろう。あまりにひどいので、夏の間に使い切ってしまっていた蚊取り線香を急遽買いにいくことになった。

中秋の名月も過ぎたことだし、そろそろコオロギや鈴虫の奏でる音だけを楽しみたい。秋のオーケストラにモスキートーンが加わると一気に風情がなくなってしまう。申し訳ないが、夏公演での名演をお願いしたい。

(青柳)

*モスキートーン:17kHz前後の高周波。人間の可聴音域は20Hz〜20kHzとされるので、かなり高い音。高齢になると聞こえづらくなるので、耳年齢のチェックになる。