Tuesday 22 January 2019

欧州モノノネ日記 その3

空港でのトランジット待ち時間が長い航空チケットを予約したときは損したような気分になっていたのに、実際空港で過ごして見ると、それほど悪いものではなかったりする。意図せずに与えられた自由時間をむしろ楽しんでいる自分がいる。

免税店を当てもなくぶらついたり、行き交う色々な人種の人たちを眺めたりしているだけでも、日本で同じような状況に置かれている時よりも飽きることはない。空港の空間、インテリアやサインもお国柄が感じられて面白いものだ。

今回オランダのスキポール空港にあった大きな針時計にはちょっと感心してしまった。よく見ると時計は液晶画面になっていて、すりガラス越しにぼんやりと向こう側に人間がいるのが見えた。その人は1分毎に分針をペンキとハケで描き、また1分後にワイパーでペンキの針を洗い消し、また描く。1分毎に描かれていく針の形やその仕草は、毎回異なっている。1時間もしくは12時間の映像作品なのだろう。ダッチデザインの家具やオランダのアート作品にも感じる「普通のようでいて狂っている」センス(もちろん良い意味で)には毎度驚かされる。

10年前にも半日ほどスキポール空港で過ごしたことがある。その時、日本から持参した文庫本をリクライニングソファーに寝転がって夢中になって読んだ記憶が頭の片隅にあったからだろうか、今回の旅でも同じ作家の文庫本を関空で購入した。今回もソファーに座って読んだ。空港での読書は不思議と気持ちいい。人や物が目まぐるしく移動している場にひとりとどまって物語という想像の旅をする。そのなんとも絶妙なシチュエーションが好きなのかもしれない。(今回読んでいた『スプートニクの恋人』の登場人物が、僕と同じくKLMを使ってスキポール空港でトランジットをして嬉しくなった)

読書の途中に小腹が空いたので何か食べようかと思ったら、物価の高さに驚いてしまった。特に円安という訳でもなかったので、単純に日本との物価の格差なのだろう。10年前は気軽にビールやコーヒー飲んだりしながら読書できたのになぁ。

(青柳)