Tuesday, 13 March 2018
ホラー対決 at horaana
たまたま最近、武満徹の映画音楽『四谷怪談』とデヴィッド・リンチ『イレイザーヘッド』を数日置いて聴く機会があった。同じホラー映画のサントラでも全然音から受ける印象が異なっていてたいへん興味深かった。
共通しているのは、生活音の中にスッと入ってくる奇妙な音を効果的に使っているところ。背後から音がしたような気がして、振り返ってしまうような。これはステレオを超えた3D音響の世界ともいえる。それがさらに、ある音が4D的に感じられた瞬間、人は恐怖を感じるのかもしれない。(『四谷怪談』はモノラル録音なのが驚き)
今スピーカーに向かって、2つのサントラを聴き比べているとぜんぜん怖くない。先日は作業をしながら背中越しに離れた場所で聞いていたら、「音だけでこんなに恐ろしいとはスゴイ!」って興奮するほどだったのに。ともに素晴らしい作品だから、リスニングに集中するとどうしても音楽的に感じられてしまうのだろう。
個人的には、『イレイザーヘッド』の方がコワイ。ずっと聴いていたら精神が壊れてしまいそうだ。僕の日常音からあまりにも異質過ぎる。ピーター・アイヴァースの歌う "IN HEAVEN" は美しいが、現実から浮遊していて、白昼夢を見ているようだ。初の長編映画でこんな音響を作り出すなんて、リンチの非凡さに脱帽。
うってかわって『四谷怪談』の音は、日本の音世界。尺八の音で幽霊が登場することにホッとする日本人の僕がここにいる。西洋楽器も多用(プレイペアード・ピアノも!)されていてそのミックス具合が絶妙。音楽的にも音響的にも楽しめる。
建物の外に漏れる『四谷怪談』の音が、horaanaにハマり過ぎて怖かったと部屋に入ってきた妻が言っていた。音を怖いと感じるとき、そのシチュエーションがキーになるのだろう。そもそもふたつとも映画のサントラなのだから、映像と合わせて聴いてみてからどちらが本当にコワイか判断することにしよう。
(青柳)