Friday, 20 October 2017

FOOTSTEPS


「あー、あの時買っておけばよかった。」と思い出すレコードが何枚かある。
あまり物事を後悔する性格ではないのだが、一度見たきりでそれ以来出会えないレコードに関しては例外だ。

Traveling Mono』でスピーカーを置かせて頂いたWorkshop Recordsのレジ後ろにクリスチャン・マークレーのポスターが貼ってあった。

ギャラリーの床一面に溝の無いレコードを敷き詰めて、観客はその上を歩き回る。そして、そのレコードの傷が一点物の音楽になるというかなりコンセプチュアルでユーモアのある作品だ。レコードは丁寧に扱う物、という先入観がある観客にとっては、かなりドキドキ、ソワソワしたことだろう。会期終了後にそのレコードはナンバリングされて『FOOTSTEPS』という名前で発売された。

大学生の時、京都のレコード店でそのボックス入り限定レコードが売っているのを見つけた。欲しくて仕方がなかったが、持ち合わせのお金がなく見送った。数日後に買いに行くと、売れてしまっていた。たいした値段ではなったので、それは、それは、後悔した・・・(ちなみに、現在のDiscogs価格約4万7 千円!)

そのエピソードをWorkshopの苗村さんに話すと、このポスターはそのボックスに入っている物だと教えてくれた。羨ましくてしかたがなかったが、このポスターはこのお店にこそ貼っていて欲しい気がして、こころが落ち着いた。

Workshop Recordsで販売されているレコード盤はどれもとてもキレイだ。盤質の善し悪しに関係なく。苗村さんはいつもレコードを洗浄して、磨いている。そんな苗村さんの背後にレコードを踏みつけているポスターが貼られていることが、なおいっそうのレコード愛を感じて嬉しくなってしまう。

(青柳)