ジョン・パウエルさんが書かれた『響きの科楽』という本が面白い。
音や音楽に関する様々な話題がユーモアたっぷりの分かりやすい文章で説明されていく。専門知識を得ようとする人よりも普通の音楽好きの方にぜひ読んで欲しい良書だ。
「音の大きさ」について書かれたところがとても印象的だった。
楽器1台による演奏と10台の演奏を比較すると音量は2倍にしかならない。
脳は音を単純に足し算しないそうだ。
生きて行く上の安全策として、敵が忍び寄る小さな音もしっかり聞こえないといけないし、落雷などのとてつもなく大きな音を聞いても耳が壊れないように人間の体は出来ている。
「わたしたちの耳は、小さな音ははっきり聞こえるが、音量が増すとその影響力が徐々に減少するように設計されている。」(P.124)そうだ。
過度に大きな音量で音楽を聴くと聴覚保護回路が働いて音をマスクしているということだ。
音楽をより深く聴くという目的においては、これでは逆効果だ。
スピーカーMONOで音楽を聴いていると必要以上に音量を上げたくなることがあまりない。
小さな音でも繊細な音をくっきりと再生するのが得意なスピーカーなので、空間に適したほどほどの音量で十分満足するのだ。家庭内で快適に音楽を楽しむ場合、それほど大きい音量は必要ないのではないだろうか。
「量より質」ということが言えるのかもしれない。
でも、「質より量!」と開き直って爆音で音を体で浴びたくなる時が僕にもある。
家でそんなことしたってたかが知れているので、そんな時はライブやクラブに行ったほうがよっぽど気持ちいい。
(青柳)