先日、ゆうきのライブ開演前にBGMでテーリ・テムリッツの『fagjazz』を会場に流した。
なんとなく持参したCDだったのだが、YTAMOさん、オオルタイチさんともに好きな作品だったみたいで、嬉しくなった。
ふたりの話によると、このCDのマスタリングは特殊で、音量をかなり控えめにしているらしい。そうすると、音量のリミットによる音の頭打ちが無くなり、音は本来の姿のまま再生される。特に音量制限を受けやすい低音がつぶれることなく、豊かでくっきりとした音になる。
これは現代のポップミュージックで主流となっている「可能な限り音を詰め込むマスタリング」とは真逆のアプローチだ。情報はなるべく多い方がよいという、現代人のあたりまえ。その背後には、大きな音で他より目立って、沢山売るぞ!というお金もうけの精神が反映されている。また、大きい音を迫力のある良い音と感じてしまう人間の特性を利用して、オーディオ業界の試聴は、かなり大きな音で行われている。こんな状況では、「音楽=うるさい」という一般的なイメージがついてしまっても仕方がない。
テーリ・テムリッツのハウスミュージックは、類まれなる美しさ・気品を纏っている。
控えめな音に潜む、伸びやかな生命力を感じる。
裏ジャケに書かれた「ベリー・ファッキング重低音」という言葉にしびれる。
(青柳)